ホルガいいとこ一度はおいで【「ミッドサマー」感想】
ミッドサマー観てきました。
パンフレットくそかわいい。
ネタバレ有りで書くのでネタバレ気になる人は読まないでくださいね。でもまぁ、「そうなるよね〜」って展開だしネタバレ踏んでても楽しい映画だと思う。
主人公のダニが、妹が両親を伴って自殺したことで精神を病んでしまうところから始まるこの映画。内心邪魔者だと思われていることを理解しつつも、彼氏のグループについていくことでホルガと出会い、そこで奇妙な体験と救いを得る……ってあらすじ。
海外映画ファンが書いてた感想たちを、日本公開が決まる前に全部読んでたんですが。
まずタイトルアバンが出るまでに伏線がすごい。これからこうなりますよ〜をたくさんねじ込んでて避けられない悪夢を予感させる。
そして、アメリカのシーンは徹底的に彩度が低く光も少ない。これがこのあとのスウェーデンでの画面とのコントラストになるんですよね。
ダニーの過呼吸、私もやったことあるから痛いほどわかるしそう思わせる演技力…やば……ってなった。フローレンスピューは「そういう人がそこにいる」っていうか、自然体というか、あんまりにもリアルで演技に感じさせないから好きです。
出てくる男たち総じてクズで笑った。エンドロールまでにこいつら死ぬなって思った。実際死んだ。
話題になってるグロですが、ちみどろ!ぐちゃぐちゃ!!って感じにグロが派手に悲惨なんじゃなくて、ああ、人間を潰したらそうなるよね…人間を開いたらそうなるよね……みたいな、現実味のあるグロだから多分ダメな人多いんだと思う。キノの旅を実写化したらこんな感じ!って雰囲気のグロだった。
個人的には監督が生き生き撮ったのが伝わったので好きです。
この映画、合法シャブ映画なんですけど。
なんでも映像が動くんですよ。えっ?花も呼吸してるんじゃない?山動いてない??あっ手が透けた!!!!
ダニの精神状態に沿って、または薬の服用に即して、ぐねぐね動く映像。それも、大袈裟なんじゃなくて、あれ?……って気づいてから怖くなる塩梅で。
これはある映画評で書かれてたことなんですが、この視覚効果、大体ドラッグをキメたときと同じだそうです。ドラッグ使うと色がおかしくなったりただグルグルしたり、って映像作りがされがちなんですが、実際は生きとし生けるものがマジで呼吸し始めるらしく。どんなだよ。
ドラッグをキメたくはないけど人生経験としてキメてみたい方にはおすすめです。映像酔いするひとは辛いかも。
あと白夜って人間の精神状態を簡単に追い詰める(明るくて眠れないから)ことが分かっているので、それも考えられたホルガの立地なんだろうなとも思える。あの村、人を追い詰めることに余念がない。
この話は『救い』の話で、まぁ万人にウケる『救い』ではないんですが、アメリカにいるなら救われなかっただろうダニは救われちゃうんですね。
彼女は結構ギリギリの精神状態だったからこそホルガで救われたというか、観客側の心情もその精神状態に徐々に近づけられるので、私たちも救われた気持ちになるんですけど。
冷静に考えれば救われる状況ではないので、そう見せてくるこの映画、怖ってなりました。あなた怖いよ。
ダニがそうだったように、私たち自身も、ホルガに操られていたことに気づかず救われてしまうんですね。
あと不自然ポイントの話。ホルガ、90年に一度の祝祭、と言う割には、建物も新しいし若者が多い。あと、白夜があるほど高緯度な地域は必ず極夜もあるので、あんな薄っぺらい建物で冬に生きていけるはずがない。ちゃんと冬にも昼間がある北海道ですらあれだぞ。冬は多分どこか違うところでぬくぬく過ごしているのでしょう。
多分この村には歴史なんてものはなくて、新興宗教団体って感じで、人々の感情をコントロールし殺戮を繰り返してんだと思うんです。人を殺すって一大イベント、もちろん人間の心に大きなショックを与えるので、その精神状態になってから思い通りにするのは簡単なんじゃあないかと(実際ダニはそう)
新しい血を入れなければ集落というのは近親相姦により奇形が生まれて死ぬので(ホルガには奇形がいるので、血の濃さは明白)、ダニやクリスチャンの血を入れることができたホルガとしては今回は大成功ですしね。
90年に一度の祝祭も、毎年やってるんじゃないのかなぁ。泣いている赤ん坊、去年の祝祭で生まれたんじゃないの?
なんかこういうタブーにも平気で触れてくるの、ゾクゾクしましたね。
宇多丸さんの映画評おすすめなので貼っておきます。
https://www.tbsradio.jp/469793
それでは。またホルガで会いましょう。